私たちは、７年間のニューヨーク在住中、毎年メトロポリタン・オペラ（以下ＭＥＴ）の
シーズンチケットを２種類、１６−１８演目分購入していたほか、シングルチケットとして私たちの見たいものを７−８本、適宜選択して追加購入していました。
したがって、私たちは、毎年２５−２６本のオペラを見ていたことになり、７年で
１８０本くらいにもなると思われます。（「これまでに見たオペラ」のページ参照）
９２年２月帰国してからも、ＭＥＴのオペラが見たくて、９３年１月、９７年１月
および９９年１１月の３回、それぞれ１週間ほど、ニューヨークへ出かけました。
９３年と９７年は、現地に到着してから、直ぐＭＥＴの窓口に飛んでいき、
その週の取れる演目を選んでチケットを購入しました。
幸い、１月下旬で比較的空いているシーズンであったため、ほとんど希望通り、
取れました。
前回、９９年１１月は、一番のお目当てがＭＥＴが２５年ぶりに取り上げた「トリスタンとイゾルデ」でしたので、現地へ行ってみたら全部「SOLD OUT」なんていわれたら、どうしようもありません。
| ＭＥＴのチケットの取り方 ＭＥＴのオペラシーズンは、９月下旬から翌年の４月中旬までです。 年によっては、４月下旬から５月上旬まで特別公演として、「The Ring」や 「Kirov Opera」などをやることがあります。 当シーズンの出し物の内容や出演歌手の顔ぶれなどは、数年前に決定され、 有名歌手や指揮者のスケジュール確保を行っていますが、われわれオペラ ファンに正式に発表されるのは、例年３月初め頃で、まず従来からのシーズン チケット購入者(Subscriber)に来シーズンのプログラムが郵送されてきます。 シーズンチケットは、曜日等でいくつかのシリーズに分けられ、それぞれ ６−９公演がセットされています。 これの申し込みが、確か、３月末か４月半ばで一旦締め切られ、５月中に 座席の確定が行われ、購入者に通知されます。 これで残った座席はさらに５・６月にミニシリーズ（３―５公演）とトリオ （３公演）の形で売り出されます。 これらシーズンチケットの第一次申し込みが済んで、座席の空きが確定した ところで、初めてバラ（Single ticket）の申し込みが始まります。 まず、７月１日から、シーズン冒頭の５週間分の公演についてメールによる 申し込みが可能となります。 電話、ファックス、インターネットおよび窓口でのチケット売り出しは、その ずっとあと、８月末の日曜日からとなります。（この段階では、もう申し込み ではなく、チケットの購入そのもので、電話・窓口はその場ですぐ、ファックス・ インターネットでは翌日（日本からですと時差もあり翌々日）にはチケットが 取れたかどうか、がわかります。(６週目以降の公演については、８週間分毎 にまとめて受け付けられます） 事前の申し込みシステムからお分かりと思いますが、ドミンゴやパバロッティ などの有名歌手やカルロス・クライバーなどＭＥＴでもなかなか聴けない指揮者 の出るオペラや、話題になりそうなオペラ、それとポピュラーなオペラの週末 公演などは、大抵、申し込み段階で「SOLD OUT」になってしまいます。 比較的取りやすいのは、意外と思われるかもしれませんが、オーケストラ （１階席）と天井桟敷（ファミリーサークル）です。オーケストラは週末１７０ドル、 平日１４０ドルとアメリカ人にとっては高いということ、同じ出すなら見やすい ２階席（グランティアー）を選ぶようです。ファミリーサークルは、非常に安く （週末２６ドル、平日２５ドル）、舞台装置や歌手の顔はオペラグラスで辛抱、 それより声が聴ければよい、何回もみたいというようなオペラ通が主体で、 若干騒がしいため、一般のアメリカ人は嫌がります。 私たちは、シーズンチケットを２種類、オーケストラ席とファミリーサークルを 取っていました。ただし、３年目くらいからは、費用節約のためオーケストラ席 を３階席（Dress Circle)に変えました。 バラのチケットを追加するときは、じっくりみたいオペラはオーケストラか ドレスサークル、何回か見たオペラで、歌手に興味があるものは、ファミリー サークルで辛抱していました。 |
そこで今回は、試しにインターネットでチケットの予約を入れてみることにしました。
「産むは案ずるより易し」、意外と簡単で確実に取れました。
他のオペラファンの方にも是非お勧めしたいので、そのノウハウを紹介かたがた、私たちのＭＥＴオペラ観賞旅行を日記風に書き綴ってみました。
私たちがインターネットを始めたのは、３年前の今頃ですが、海外のサイトでＣＮＮの次にアクセスしたのがＭＥＴでした。そして、その充実ぶりにすっかり感心させられました。シーズン中の日々のオペラカレンダーから各オペラの出演指揮者・歌手の名前、オペラのあらすじ、チケットの料金および空席の有無、申し込みの方法まで、懇切丁寧に説明してあります。 ただし、今のところ英語オンリーで、日本語はありません。
平成１１年８月某日
インターネットでＭＥＴのページを見ていた私は、今シーズンのニュープロダクションのなかに「トリスタンとイゾルデ」が入っていることを見付けました。
「トリスタン」は７年間のニューヨーク滞在中には一度も演じられなかった有名オペラの一つで、ワーグナーファンの私たちにとっては必見の演目です。
カレンダーを見ると１１月２２日初演で１２月中旬まで合計８回あることがわかりました。
出演者をみると、指揮レバイン、トリスタン ベン・ヘップナー、イゾルデ ジェーン・イーグレンとあり、シングル・チケットのインターネットによる発売日は９月１２日です。
あと１ヶ月か、SOLD OUTになっていなければいいが・・・。
平成１１年９月１３日（月）
夜、インターネットでＭＥＴのホームページを開き、「トリスタン」の８回全部について、
チケットの有無を調べますと、初演および週末（金・土）にあたるものは、すべて
SOLD OUTで、取れるのは、１１月２９日（月）と１２月１４日（火）しかありません。
１２月１４日はクリスマスに近すぎて、ホテルも混んでくる。１１月２９日しかない！
よし、決めた。あとは旅行日程だが、土曜日出発となれば１１月２７日からの
１週間しかない。着いてすぐの月曜日に時差ぼけのままで5時間余のオペラは
少々きついが、好きなものはなんとかなるだろう。
あとは、火曜日以降のオペラである。平日なので座席に注文を付けなければ
木曜日までは、全部ＯＫである。
二人で慎重に検討の結果、次の通り申し込むことにした。
１１月２９日（月）「トリスタン」 ドレスサークル（７５ドル）
１１月３０日（火）「愛の妙薬」 ファミリーサークル（２５ドル）
（当代若手の人気ペア、アラーニャと
ゲオルギュー出演でこれしか空いていない）
１２月１日（水） 「メフィストフェレ」 ドレスサークル（７５ドル）
１２月２日（木） 「オテロ」 ファミリーサークル（２５ドル）
（これも人気でこれしか空いていない）
さあ、いよいよ申し込みだ。上手く取れると良いんだが・・・。
もう一度、ＭＥＴの「オペラシーズン」のページを開き、１１月２９日のところをクリック
すると出演者の名前や座席の空席状況が出てきますが、その下に申し込みの記入欄
があります。そこに座席の種類（オーケストラ、ドレスサークルなど）と購入枚数を
記入し、次に進みます（Ｃｏｎｔｉｎｕｅをクリック）。
画面が変わって、金額の確認と手数料（１枚につき５．５０ドル）の説明があり、
さらに寄付（１０ドル）をしてくれるか、どうかの質問がありますので、
「No, I do not want ---」のところにクリックして次に進みます。
今度は、個人情報と代金支払方法について聞いてきますので、氏名、住所、
電話番号とクレジットカードの種類、番号、有効期限を記入します。
申込者とカード保有者の名前が異なる場合は、カードの方の名前も入れます。
最後に記入内容に相違ないか、眼でチェックしてＯＫであれば、「Submit」を
クリックします。
これで「トリスタン」の申し込みは完了。同じことをもう３回「愛の妙薬」等について
行います。同じことを４回も繰り返すのは面倒ですが、そうしょっちゅうやることでも
ないし、好きなオペラを見に行くためなら、どおってことはない。
さあ、あとはＭＥＴからの返事待ち、寝るとしよう。
平成１１年９月１５日（水）
今日は、敬老の日。朝、ジョギングから帰って、e-mailを開くと、ＭＥＴから
４件のメッセージが入っていた。どきどきして中を開くと、
チケット購入が正しく受け付けられ、チケットが確保されたことの確認で、
ＭＥＴのオーダー番号も明記され、チケットの引き渡しは、ＭＥＴの窓口に
クレジットカードを呈示してオーダー番号をいえばＯＫ、キャンセルは一切ダメ、
という内容である。
４つのオペラについて、同じような内容のメールが入っていて、すべてＯＫであった。
やったあ！ インターネットは素晴らしい！
午後、家内と早速、千里中央のＪＴＢに行き、１１月２７日（土）から１２月５日（日）
までフリータイムのニューヨーク旅行をしたいんですが・・・と相談する。
ところが、関西空港からニューヨークへのセット旅行は結構混んでいて、ホテルが
取りにくいですよ、と、かまされ、ドキッとした。
結局、ノースウェストのデトロイト経由で、ルーズベルトホテルならある、というので
それで頼むこととした。
平成１１年１１月２７日（土）
夜の７時頃、ニューヨークのラガーディア空港に到着、ＪＴＢの出迎えを受け、
デトロイトから一緒に着いた２組の若い夫婦とホテルへ。
１組はヒルトンで下車、その後、４５丁目とマディソンのルーズベルトとなったが、
着いたのは、８時頃。チェックインのあと、グランドセントラル駅構内の有名な
「オイスターバー」に行き、遅い夕食を楽しみ、英気を養う。
平成１１年１１月２８日（日）
快晴で、ホテル隣のデリーでブランチを取ったあと、グランドセントラル駅から
郊外電車に乗って、懐かしのウェストチェスターに向かい、ライの知人を訪ねた。
夜、ニューヨーク時代の仕事仲間３人と２番街４１丁目のイタリアン「CIBO」で
会食。
平成１１年１１月２９日（月）
朝、１１時頃、ＭＥＴのチケットオフィスに行き、２０分、行列に並んでチケットを
受け取る。予約済みであっても専用の窓口はなく、スポットのチケット購入者の
列に辛抱強く待たなければならないが、前回と違って間違いなくあるというのは
気分的に楽である。
午後、映画日本でも公開していた「The Sixth Sense」を見る。
夜は、７時開演なので、ホテルの隣で軽食を取って、歩いてリンカーンセンターへ。
ＭＥＴでの「トリスタン」は２５年ぶりだそうである。ＭＥＴのような大きな劇場で
最後まで歌いきれる歌手が確保できなかったからだという。
今回、出演したBen Heppner, Jane Eaglenは、いずれも朗々とした声で
最後まで乱れず、素晴らしい歌唱を聴かせてくれた。やはり、わざわざ日本から
聴きに来てよかった。レバイン指揮のＭＥＴオーケストラも出足は今ひとつだったが、
さすがに、尻上がりに良くなった。満足、満足。
平成１１年１１月３０日（火）
午前中、メトロポリタン美術館に行き、アングルの特別展とアネンバーグ・
ギャラリーの印象派コーナーを観賞。
午後、映画「American Beauty」を見る。
夜は、アラーニャとゲオルギューの「愛の妙薬」。
「オペラは顔ではない、声の善し悪しがすべて」という人もいるが、やはり、
良い声を持った美男美女が出てきて、アリアの名曲をつぎつぎ歌ってくれると
いうことないです。昨日の重たいワーグナーと違い、心もうきうきし、帰りの
バスの中で思わず、メロディを口ずさんでしまった。ハッピー。
平成１１年１２月１日（水）
今日は、日中二人は別行動。
家内は、スカースデールにいるアメリカ人と日本人の友人を別々に訪ね、
私は、ダウンタウンと対岸のニュージャージーにあるかっての職場を訪ねる
こととした。
夕方、ホテルで落ち合い、軽く夕食後、地下鉄でＭＥＴへ。
今夜の出し物は、「メフィストフェレ」。前にニューヨーク・シティオペラで見たこと
はあるが、ほとんど印象に残っていない。ＭＥＴで見るのは初めてなので、
楽しみなのだが、残念なことは先週までメフィストフェレ役をやっていたラメイ
（Samuel Ramey）が今週は出ていないということ。ＭＥＴではよくあることで、
前半と後半とで主役陣ががらっと変わってしまう。後半の方が良くなることもある。
主役に新人が抜擢されて、評判をとることもある。
今夜は、おまけにマルガリータ役のミッロ(April Millo)が風邪で代役が出、
がっかりしたが、ボイトの音楽、特にコーラスがこの上なく、清冽で美しく、
うっとりしてしまった。とはいえ、やはりメフィストフェレは、ラメイほどの声量
がなく、動きも若干ぎこちない感じがした。
平成１１年１２月２日（木）
今日も、私たちは昼過ぎまで別行動。家内は再び、メトロポリタン美術館へ。
私は、もう一つの昔の職場へ行き、昼食を挟んで旧交を温める。
午後、二人で映画、イングリッシュ・ペイシェントの再来といわれる「The End
of the Afair」を観賞。
夜、今回最後のオペラ、「オテロ」だが、またも楽しみにしていたデズデモーナ役
のベナコーワが風邪で代役が出てしまった。
オテロ役のボガチョフはあまり好きでないので興味半減。
今夜は、前の席の背中に液晶で表示されるセリフをじっくり読んで、ストーリー
の理解を深めよう。
平成１１年１２月３日（金）
午前中、Tower RecordとBarnes and Noble（本屋）に行き、オペラＣＤと
ペーパーバックスなどを買う。
午後、映画「The World is Enough」（いわゆる００７の最新作）を観賞。
やっぱり、００７は痛快で楽しい。
夜、生ガキを食べたくなって、また「オイスターバー」へ行く。
食事後、昨夜から点灯したロックフェラーセンターの大クリスマスツリーを見に行く。
７年ぶりだが、今年の樅の木は特別大きい。２０メートルはあろうか。きれいの一言。
８時からブロードウェイ・ミュージカル「KISS ME KATE」でニューヨーク最後の夜を
楽しむ。（本当はライオンキングを見たかったが、何ヶ月か先まで満員だったので
断念した。） しかし、主役の二人が素晴らしく、舞台も華やかで、楽しく
脇役陣も、さすがブロードウェイという高い水準の歌とダンスを見せてくれた。
充実した１週間でした。明日は日本へ帰る。お名残惜しい。これからも毎年、
オペラを見にニューヨークにきたいものだ。
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