特別寄稿　石綿さんのペーパーバックス読後感（Ｈ１２−１１−２０）

「マイケル・クライトンの一連の作品を拝借して」

                              　　　　ハンドルネームはレンツ君とリンデちゃん

  山本さんにお勧めいただきお借りして読ませていただいた「マイケル・クライトン」。癖になってしまうほどの面白さ。
難しい単語がでてきてもテンポの速いストーリー展開にひかれてどんどん先に進んでしまう。ペーパーバックスの
楽しさにめぐりあえたのも山本さんのおかげです。日本の同様な作品とはやはり一味違った趣がありました。

  さて始めに最新作「Timeline」。量子力学と歴史学を結び付けた奇想天外な物語。でもまったくのファンタジーに
終わらないところがクライトンの真骨頂。博識とイマジネーションで引きずり込む迫力はまさにロッシーニテンポならぬ
クライトンテンポ。登場人物のキャラクタも多彩。しかもきっちりと最後のおちまで計算されたもの。
フランスの古城、中世、騎士物語といったロマンチック型歴史ファンには応えられない魅力の1冊。

  この「Timeline」と双璧をなすと私が勝手に思っているのは「Air Frame」。アメリカの大企業の姿、とくに経営者の
イメージが迫力を持って描かれています。ここでもまたクライトンのお好みのタイプでしょうか。主人公の女性が大活躍。
シドニーシェルダンのヒロインが例外なく美人であるのにクライトンは強烈な個性で女性を描きます。
ここでも007風なスピーディーな展開に引きずり込まれますが、再度またじっくりと味わいたくなる作品でした。

  以上の2冊の次に良かったのは「Rising Sun」。ご存知ジャパンバッシング。でもバブル崩壊後の現在からみると
古き良き時代か。日本人のいやらしさを徹底的に追求。それを読んで快感。マゾ的な日本人の一面。少し古いけど
日本人としては忘れてはいけない一冊。クライトンのいいところは日本の同種の作品とちがって主人公が理想的には
書かれておらず、やましいところもしっかりもっている。日本の作家が書くとどうしても主人公に情が移ってしまうようで
アイドルが主人公の映画のようになってしまうのが多いですね。だから私はどこかの知事の小説は大嫌い。

  続いて「Disclosure」。これも何年か前に映画化。これは人事担当必読のセクハラ問題。しかも結構プロジェクト
マネージングもテーマになっていて情報業界の我々としてはなじみある技術用語がたくさん出てきて楽しく読めます。
でも新しく赴任してきた上司が昔の女だったというのは刺激的なテーマ。それだけでグーッと来てしまいます。

  クライトンと初めての出会いの「Jurassic Park」。これはいうまでもなく一世を風靡しました。
引き続き「The Lost World」。まさに手に汗を握るというたとえ通り。クライトン得意の人物像「黒人の天才的科学者」
神経質で嫌みなタイプ、がここでも活躍。でも更に大活躍するのが女性科学者。女性の描きかたも多彩とはいえないが
深いと思います。このあたりは女性の方に聞いてみたいところ。

  最後は「Sphere」。これもＳＦらしいストーリー展開で楽しめましたが、他の作品と比べると最後がやや欲求不満を
感じました。なぞの物体がいまいち最後でも明確に理解できませんでしたので。これは私の理解不足かもしれません。

  以上、クライトンの作品はどれもいかにも映画化を前提としているように感じさせるテンポとストーリー展開をもっています。
ハリウッドの威力あるいはアメリカ人の好みを感じさせます。同じようなファンタジーでもヨーロッパの作品となると
かなり趣が異なるのでは…。たとえば作風は全然異なりますが、イタロ・カルヴィーノの木登り男爵や真っ二つの子爵と
いった奇想天外だが哲学的な作品と比べるとアメリカの風土、体質を感じてしまいます。（でも誰が死んじゃって
誰が生き残るというのがなんとなくわかってしまうのは映画タッチそのものですね）

Moichi's　１９９９　ＰＡＰＥＲＢＡＣＫＳ　ＢＥＳＴ　１０

Arthur Haileyの作品は久しぶりに読んだが、さすがに最後までしっかり読まさせてくれた。
Christopher Reichの Numbered Account はスイスの銀行を舞台にした乗っ取り事件で、
匿名口座の扱いなど元銀行員として興味深く読んだ。
Tom Clancyの Rainbow Six は００７を思わせる文句なしの娯楽作品。

今日、朝一番「かずこ」から「あなた。すごい人がいるよ。読んでみて！」
と朝刊を突きつけられた。読んでみてびっくり。
いやー、世の中には、とてつもない人がいるものですねー。
サントリーで１０年の海外勤務を経験し、サントリー
ホールの総支配人を最後に６５歳でリタイアーした人
ですが、67歳のときに「ＴＯＥＩＣ」の試験で９８０点を
取って、約３７千人いた受験生中、全国一となったんだ
そうです。　
しかも、その後も毎年受験し、９５０点前後をキープして
いるというのです。
私は「ＴＯＥＩＣ」なるものを受けたことがありませんが、
せいぜい７００点くらいがやっとではないかと思います。
帰国子女でも９００点に届くのは大変のようですね。
この人は、読解力を付けるのに「タイムを読む会」や
「ニューヨーク・タイムスを読む会」に参加する一方、
ペーパバックスをバリバリ読んでいるそうです。
ペーパーバックス愛好者である私は俄然、力を得た
感じです。このところ毎年「ＴＯＥＩＣ」を受験している会社
の後輩　Ｉ 君にも同様趣旨でペーパーバックス読書を
勧め、本を貸してあげていますが、さしずめ、正解という
ことになりましょう。（平成１２年２月２７日朝日新聞朝刊）

最近５年間に読んだＰＡＰＥＲＢＡＣＫＳ一覧(2000年前後の5年間）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｓ：モイチ　Ｋ：かずこ

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